アルゼンチン・パンパ ー世界的な食糧基地ー
アルゼンチンのラプラタ川流域に広がるパンパは、日本の国土の約2倍に相当する総面積約75万平方キロメートルに及ぶ広大な温帯草原地帯であり、南米大陸の肥沃な大地として世界的な穀倉・牧畜地帯を形成している。この地域は、降水量の違いによって大きく2つに分類される。東部の「湿潤パンパ」では年間降水量が約800〜1,000mm以上の温暖湿潤気候(Cfa)のもと、パンパ土と呼ばれる腐植に富んだ肥沃な黒色土(アルフィソルやモールソル)を活かしてとうもろこし、小麦、大豆、アルファルファの栽培や肉牛の集約的飼育が行われる。一方、内陸部の「乾燥パンパ」では年間降水量500mm未満のステップ気候(BS)のため耕作には向かず、広大な土地を利用した粗放的な大規模牛・羊の放牧が中心となっている。
こうしたパンパは、1870年代の冷凍船の開発によるヨーロッパへの新鮮な牛肉の大量輸出、内陸部から港湾都市ブエノスアイレスへと家畜や穀物を迅速に運ぶ鉄道網の整備により食料供給地として環境が整った。そして、牛の肉質を向上させた栄養価の高い牧草(アルファルファ)の導入により、19世紀後半以降に世界的な食糧供給基地へと変貌を遂げた。
パンパの代表的な農業的景観を衛星画像で見ることにする。ここでは、パンパを象徴する大規模な農業・牧畜景観(エスタンシア=大農牧場や、整然とした円形農場など)を明瞭に観察できる代表的な場所を二か所衛星画像で紹介する。

まず最初は、湿潤パンパの伝統的な大牧場(エスタンシア)と穀物畑である。この画像は、ブエノスアイレス州の北西部に位置するペルガミーノ周辺で、湿潤パンパの中心地であり、大豆や小麦の耕作地と、緑豊かな牛の放牧地がパッチワークのように広がる典型的な景観が見られる(図1、図2)。
景観の特徴として、四角く区切られた広大な一区画の畑や、放牧地の中に点在するエスタンシア(主屋や家畜の水飲み場、風力揚水ポンプとため池)が確認できる。地下水を汲み上げてスプリンクラーで散水するセンターピボット(灌漑農業)も見られる。


次は、アルゼンチン最古クラスの歴史的エスタンシア周辺である。大西洋に近いチャスコムス周辺は、初期の牛の放牧が発展した地域であり、現在も広大な湿地や草原の中に大規模な放牧地が維持されている。
景観の特徴: 自然の地形や水辺を活かしつつ、地平線まで続くような広大な牧草地に牛が放牧されている、パンパの原風景に近い景観といわれる。


<図4>チャスコムス東部の大牧場 スケールは20km。Sentinel-2 2026/6/15.