メコンデルタ 多角化へと進む農業
メコン川 は、チベット高原を源流とし、中国・ミャンマー・ラオス・タイ・カンボジア・ベトナムの6カ国を流れて南シナ海へ注ぐ、全長約4,800kmの国際河川である。その下流に形成されているのがメコンデルタである。その最下流部に形成されたメコンデルタ は、ベトナム最南部に形成された世界最大級の三角州地帯であり、ホーチミン市の南西に広がっている。面積は約3万9,000平方kmで、メコン川本流と多数の支流・運河が網の目状に広がる低平な地形が特徴である。この地域では、河川が運搬した土砂が堆積して自然堤防が形成され、その周囲には広大な氾濫原が広がる。カントー(画像2,シーン枠の北東に地名が見える)やヴィンロン周辺では自然堤防が発達しており、比較的高燥な土地では集約的な農業が営まれている。一方、チャウドックやロンスエン(カントーの50~60km北にありメコン川右岸に位置する)周辺の低地では、雨季になると大規模な洪水が発生しやすい。デルタ全体はほぼ平坦であるが、北西部にはサム山や「七つの山(バイヌイ)」と呼ばれる100〜300m級の孤立丘陵が存在する。
19世紀のフランス植民地時代には大規模な運河開削と水路整備が進められ、水田面積が急速に拡大した。現在ではベトナム最大の穀倉地帯となり、「ベトナムの米櫃」と呼ばれている。メコンデルタの農業の中心は稲作であり、ベトナム国内の米生産量の大部分を占める。輸出米の多くもこの地域で生産されており、ベトナムが世界有数の米輸出国となる基盤になっている。この地域では、雨季の洪水によって運ばれる肥沃なシルト質土壌を利用した農業が発展した。豊富な水資源と高温多湿な気候により、場所によっては年に2〜3回の収穫が可能である。
また、近年は稲作だけでなく多角化も進んでいる。そのひとつが果樹栽培である。地域の特性を生かして、マンゴー、ドリアン、ランブータン、ココナッツなどの熱帯果樹が栽培される。 また、デルタ特有の環境を利用した水産養殖も近年の特徴である。エビやナマズの養殖が盛んで、輸出産業として重要である。 さら、水田と養魚池を組み合わせた複合経営も見られる。
そのいっぽうで、農業にはいくつかの課題もある。例えば上流に建設されたダムによる土砂供給減少や軟弱地盤のために発生する地盤沈下、海面上昇による塩水侵入などのほかに、農薬・化学肥料使用による環境負荷 も近年になって顕在化している。また、特に乾季には海水が内陸へ侵入し、塩害によって稲作が困難になる地域が増えている。そのため近年では、耐塩性作物への転換や、稲作からエビ養殖への切り替えなど、環境変化への適応も進められている。

背景はGoogle Map

画像の位置は,メコン川の右岸側にあたる。本文中のカント―は画像外の北東部にある。

網目状の白い線の多くは水路である,太い白線は道路と並行に走る水路である。

画像北部を東西に走る水路を境に,南北の高知の区画の相違が著しい。海岸線に沿って観られる矩形の人工物は養殖施設か? 白く見える直線は水路(水路と道路が並行する場所もある)である。
2025年12月05日 SENTINEL2 RGB:432