オランダの花卉栽培と干拓地(ポルダー)の土地利用
オランダは世界有数の花卉(かき)生産・輸出国であり、チューリップやユリなどの球根類をはじめ、切花や鉢植え植物など、多様な花卉を生産している。大型ガラス温室を利用した施設園芸が発達しており、温度・湿度・養分などをコンピューターで制御する高度な栽培によって、高い生産性を実現している。また、アムステルダム近郊のアールスメールには世界最大級の花き流通市場があり、生産から流通までが効率的に結び付いている。
オランダの農業は、干拓地(ポルダー)の造成と密接に関係している。国土の約26%は海面下に位置し、浅海や湖沼を干拓して造成された農地では、風車やポンプによる排水・地下水位管理が行われている。この高度な水管理により、農業に適した環境が維持されるとともに、運河網は農産物の輸送にも利用されてきた。
農業形態は土壌条件によって大きく異なる。北海沿岸の砂質土壌では、排水性の良さを生かしたチューリップ、ヒヤシンス、スイセン、クロッカスなどの球根栽培が盛んで、小区画の色鮮やかな花畑が広がる。一方、低地や干拓地では施設園芸が発達し、切花や観賞植物が集中的に栽培されている。
ウェストエインデル湖(Westeinderplassen)周辺には、性格の異なる農業地域が近接して分布する。湖岸の細長い島状農地では、泥炭地を利用してライラックなどの花木や切花、多年生花卉が栽培され、湖底の泥を施用する伝統的な農法が現在も受け継がれている。
湖の東側には、1852年に造成されたハーレマーメール干拓地(Haarlemmermeerpolder)が広がる。この地域は海成粘土からなる大区画農地であり、北西-南東方向に延びる規則正しい長方形区画が特徴である。これは干拓時に排水路、道路、農地区画を一体的に設計した結果であり、大型農業機械による効率的な畑作に適している。主な作物はジャガイモ、小麦、テンサイ、タマネギ、ニンジン、キャベツなどで、球根栽培地帯とは土地利用が大きく異なる。
さらに、アールスメール周辺にはガラス温室が集中し、切花や観賞植物の施設園芸が発達している。生産地と世界最大級の花き流通拠点が近接することにより、オランダの花卉産業は高い国際競争力を維持している。
この地域では、西から東へ約20 kmの範囲に、①北海沿岸の球根栽培地帯、②ハーレマーメール干拓地の大規模畑作地帯、③ウェストエインデル湖・アールスメール周辺の花卉・温室園芸地帯という、異なる3種類の農業景観が連続して分布している。これは、土壌条件と干拓の歴史が土地利用を規定した、オランダを代表する農業景観である。
衛星画像は2026年4月に撮像された、欧州機構のSentinel-2衛星のデータから作成した。また、景観写真は、グーグルストリートビューによるものである。NDVI画像は、いわゆる植生活性度を示す指標で、濃い緑色ほど活性度が高いことを示している。活性度が低いと判定された矩形の部分は、裸地か温室である可能性が高い。
日本ではストリートビューを活用した地理学の論文はまだ少ないが、撮影頻度があがり経年変化が分かるようになると、研究資料として貴重なアーカイブとなるだろう。
この文章をまとめながら、沖永良部島出身の卒業生を思い出した。百合の産地として有名な永良部島の花き組合の幹部だった親族が、たびたびオランダの花き組合に出張に行くという話だった。鹿児島の離島とも深い関係がある。

オープンストリートマップから作成


海岸に近い細かい区画の部分が有名なチューリップ畑 2026年4月24日 Sentinel-2 RGB:342

2026年4月24日 Sentinel-2




景観写真 ① ~ ④ 画像2の数字に対応する