パルース -アメリカ合衆国北西部の農業地帯-
パルースとよばれるこの地域は,なだらかな丘陵が広がる。パルースという言葉の起源は不明であるが,いくつかの説がある(ここでは触れない)。多年生の草が繁茂する広大なプレーリー(樹木が少ない広大な温帯草原(大草原))だったこの地域は,現在ではほとんど農耕地に改変され元の植生がみられる地域はほとんどないという。
ここでみられる丘陵は、風で運ばれた細粒のシルトや砂(パルース・ローム)が厚く堆積して形成された黄土からなる地形である。堆積物の厚さは最大で70m以上にもなり、内部には石灰質の古土壌(カルクリート)が複数挟まれている。これらの古土壌は、黄土の堆積が連続的ではなく、数千〜数万年規模の休止期を挟みながら進んだことを示している。黄土の堆積時期は長く、最古の層は約200万〜100万年前であり、新しい層は約1万5千年前から現在までの間に堆積している。その下位層も、約7万7千〜1万6千年前の間に断続的に積み重なったことが年代測定により判明している。
パルースの黄土の主な供給源は、ミズーラ洪水である。ミズーラ洪水とは、最終氷期に氷河がつくった巨大な氷河湖が何度も決壊し、北米北西部に大規模な洪水を引き起こした現象である。洪水は膨大な土砂を運び、その堆積物はハンフォード層と呼ばれる。パルースの黄土は、このハンフォード層の細粒物質が乾燥後に風で舞い上がり、広範囲にわたり空中落下として堆積したものである。パルースの丘陵には砂丘で見られるような交差層理がなく、長期間にわたる植物根や昆虫活動による撹乱によって土壌が均質化していることから、これらの丘陵は「風成の細粒物質が長い時間をかけてゆっくりと積もって形成された地形」であると推定されている。
パルースの大部分は農耕地になっており、アメリカ北西部を代表する主要な農業地帯で特に小麦栽培で知られている。19世紀後半、 ワラワラ地域で乾燥地農業が成功したことを契機に、パルースでも小麦栽培が試みられ、1880年代には急速な入植と農地化が進んだ。1890年頃までに、ほぼ全域が農地として開拓され、小麦生産地として確立した。ワラワラ地域とは、ワシントン州南東部のワラワラ郡を中心とし、スネーク川以南に広がる地域を指す。この地域は、現在のパルース地域の南側に位置し、19世紀半ばに太平洋岸北西部で最初に乾燥地小麦農業が成功した場所である。ここで確立された農法が、1870年代以降、スネーク川以北のパルース地域へと拡大していった 。
初期の農業は人力と馬力に大きく依存し、収穫や脱穀には多数の労働者と家畜を必要とした。その後、20世紀初頭にコンバインが導入され、1930年までに小麦の約90%が機械収穫されるようになった。一方、丘陵地形のためトラクターの普及は遅れ、同時期に導入率は約20%にとどまっていた。第二次世界大戦後には化学肥料の使用が広まり、作物生産量は大幅に増加した。現在では小麦に加え、レンズ豆(レンティル)の一大生産地としても重要であり、全米有数の豆類栽培地域となっている。農業の集約化により、地域の草原や湿地の大部分は農地へ転換され、水文環境や生態系に大きな影響を与えたが、2000年代以降は不耕起栽培(ノー・ティル農法)の導入により、土壌侵食などの環境負荷は軽減されつつある。
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