アメリカ国立公文書館 ーU2スパイ機が撮影したイラクの写真を探しにー 長谷川 均
ちょうど一年前(2025年6月)のことです。17年ぶりにアメリカへ行ってきました。前回はフロリダ半島の南部の自然を堪能してきましたが、今回は首都で部屋にこもってひたすら仕事です。
訪問先のアメリカ合衆国コロンビア特別区(District of Columbia)は、アメリカの首都で通称はワシントンD.C.です。この中心部にある国立公文書記録管理院 (アーカイブ 1)の新館(アーカイブス2)、通称NARAが目的地です(写真1)。ここは、郊外のメリーランド大学カレッジパーク・キャンパスの敷地に隣接して建っています。とはいえ、敷地が広大なので大学が見えるわけではありません。

国立公文書館の新館には、地図や空中写真が閲覧できる部屋があります。ここでU2スパイ機(写真2)が撮影した画像を検索し複写しようということで、研究仲間3人で訪問しました。現地でさらに1名を加え、4名で作業にあたりました。なんで4名と思うかもしれませんが理由があります。一人が借りだせる量に制限があるので、一度に広範囲の画像を検索するためにはできるだけ大勢で作業をする必要があるからです。U2の画像は、アナログ写真です。U‑2 偵察機に搭載されていたカメラ(Optical Bar Camera, OBC)で使用されるロールフィルムは、1 ロールあたり約 1,600 枚の写真を撮影できる仕様となっていました(写真3)。
事前に遠方の倉庫(冷凍庫)から取り寄せてもらい解凍してあったロールフィルムを39缶、1本ずつ、1枚ずつ調べています。60年も前の撮影ですが、驚くほど美しく解像度もそれなりに良くて見とれるほど。幸いにして3缶目で目当てのターゲットにたどり着きました。一般の空中写真と異なり、標定図のようなものがあるわけではないのです。写真4のような図(写真4)をもとに、アタリを付けて探します。各フレームは、地上の約 204 km四方の範囲をカバーする広角のパノラマ画像となっており、広範囲の地形を高解像度で撮影することができました(写真4)。それなのに標定図が無い。どこが映っているのか探すのが大変です。
一時はコース外でダメかと諦めかけ、昼飯を食べに食堂に行っている間に、昼食を食べる習慣のない今回のリーダーであるオリエント考古学のK氏が執念で探し当てました。
検索した画像は、自分たちでScanすることで経費もずいぶん節約できました。私たちがいた3階のフロアは、地図や空中写真の閲覧とともに、自分でScanできる設備もそろっていました(写真6)。自分でできるので好都合でした。閲覧室にいる大部分は、依頼を受けて作業している業者の人たちのようです。スキャナーの使用は時間制なので、自前のスキャナーを持ち込んでいる人も大勢いました。2階で文献を探している人も、自前のスキャナーを持ち込んでいるようです。





写真7と8は、NARAの展示コーナーにあった写真です。1910年代初頭に撮影されたアラスカの氷河のパノラマ写真です。これも解像度が良くて驚きでした。


新館には,江戸末期の日本語の資料がたくさん収蔵されているということで,同じ時期に日本人の研究者も何人か来ているようでした。
入退室時のチェックは厳しいし、事前に使用規則のオンラインセミナーを受講する必要もありました。鉛筆以外の筆記具やファイルの持ち込みも禁止です。そのかわりPCやカメラ、スキャナーの持ち込みは自由です。大げさな一眼レフや三脚を持ち込んで、投写台の上で空中写真のネガを複写している業者とおぼしき人たちもいました。
写真9のサンドイッチはNARAのカフェテリアで食べた昼食です。これで3000円だから、「円は弱い」をここでも実感しました。


写真1~8:長谷川均撮影.