オーストリア・ヴァッハウ渓谷 長島 弘道
オーストリアの北部を流れるドナウ川のうち、特にメリクからクレクスにかけての36 kmがヴァッハウ渓谷といわれています。丘陵地に挟まれたこの流域の開発は古く新石器時代とのこと、今日の集落の原形ができたのは11世紀頃と云われています。流域の斜面には、古い修道院、城郭、建築物の廃墟、段々畑のぶどう栽培などが見られます。歴史のある町や村が斜面を背景に点在し、その建物の色、建築様式がこの地域独特の景観を作り出しています。2000年には「ヴァッハウ渓谷の文化的景観」として世界遺産に登録されました。ここでは、メルクからクレムスにかけてクルーズ船から見える景観とクレムスの町の一端を紹介します。

舗装された道路とそれに沿った芝地、間近に感じられる森の雰囲気。これがヴァッハウ渓谷クルーズ船観光への入り口。

メルクを出発して間もなく右手に見える城。最初はローマ人の砦、12世紀に城として造営、その後19世紀に修復される。河川水面からの高さは40m。

この辺り両岸斜面は森林に覆われている。

左手丘の上に建物が見える。これが廃墟であるか否かは不明であるが、このような位置に廃墟、あるいは廃墟らしき建物が残されている。そうした景観は何か所かで観察される。

乗船券チェック。サイクリングロードもあるので自転車を持ち込む人もいる。
桟橋入り口の白地の表示:左“Welcome”,右”Good bye“

ヴァイセンキルヒェンとは白い教会の意味。起源は14世紀に要塞を兼ねた教会として造られる。9世紀に修道士によるブドウ園の開発が起点となって町が発展してきた。

石積みの段々畑。ヴァッハウ渓谷が含まれるニーダーエステライヒ州は、オーストリアのぶどう栽培面積・ワイン生産のそれぞれ60%を占めるとのこと。

後方の建物は、デュルンシュタイン・バロック・教会。この教会は15世紀に教区教会として造られ、18世紀改修される。行政的には、デュルンシュタインに属する。

看板・広告は、その街の状況を知るうえで貴重な判断材料になる。
左手の案内板の表示:上から順に自家製品直売所、市議会議事堂、ワイン博物館、アートギャラリー、レストラン、ワイン博物館。(注3)

観光客はここでちょっと休憩。

最初は1480年に建てられる。その後18世紀にバロック様式でつくり変えられる。クレムスの市街地は19世紀末まで城壁で囲まれていた。2005年市制700年を記念して可能な限り原型に沿った形で復元された。

車両通行禁止。左手表示:中心市街地、シュタット・クレムス ワイナリーは左折。

再建された市壁と近代的なビルのある小路市壁の再建年次は未確認であるが、レンガ造りの壁にはすでにつる草が生えている。通りの名は“市壁小路”(Wallgasse)。市の文化財に指定されている。歴史的建造物の再建と近代的なビル。繁華街とは異なる街のもう一つの顔。生活空間の変化の過程にまで関心が拡大される。

繁華街から一歩入ったところ。斜面に建てられた住宅。建物の色、植木、花。クレムスの暮らしの一端が垣間見られる。
注1:ヴァッハウ渓谷で運航している汽船会社は2社。メルクからクレムスまでの所要時間:1時間30分、料金:1人18ユーロ(2008年)。
注2:クレムスの正式名称はKrems an der donau. 歴史的建造物が多く残っていること、ワインの種類、生産量が多いことで知られている。アプリコット ブランデーは特産品。
注3:道路に置かれている私的な看板の内容:”LANDHAUS”は田舎の宿泊施設、”SCHNAPPCEN -70 %”は衣料品店のセールの広告。
(2008年8月8日 名誉教授 長島弘道 撮影)