アメリカ-カナダ国境と大陸氷河の境界線
人工的な国境線の多くはアフリカや中東地域で見られる.このような人工的な国境は、稜線や河川などの地形ではなく、緯線や経線などの基準線に基づいて設定される国境である.これらは特に、アフリカや中東地域に多く,国境線が直線状になっていることが特徴である.これらの地域では,砂漠や森林地帯を国境が通過することが多く衛星画像から認識できるものは少ない.
ところが,直線状の国境でも,先に紹介したアメリカとメキシコや,以前に「今月の衛星画像」で取り上げたアメリカとカナダの国境は比較的明瞭に認識できる.アメリカ-カナダ国境は,土地利用の違いで線が引ける.画像1はその一例である.先に述べたように,これは以前に取り上げたので,今回はアメリカとカナダの国境付近に顕著に見られる特徴ある地形について見てみたい.それは大小の湖沼や凹地である.この地形の分布する範囲を囲むと,図2,3のように,舌状の境界線で囲まれた地域が現れる.この範囲のデータを衛星画像で接合するのはけっこう手間が掛かるので,ここではこの中から代表的な地域を選んで画像にすることにした(画像2,3).対象となるのは,モンタナ州北部からノースダコタ、サスカチュワン州などに広がるプレーリー・ポットホール地域(prairie pothole region)とよばれる地域である.
アメリカ・モンタナ州北部からカナダにかけての国境付近に多く見られる小規模な湖沼や凹地の多くは、ウィスコンシン氷期(約2万年前に最盛期を迎えていた)に広がっていた大陸氷河の作用によって形成された地形である.その主な成因は幾つかある.まず,ケトル(Kettle lakes)/ケトル湖とよばれる湖沼がある.これは氷河が後退する際に、氷河の中に取り残された氷塊が地面に埋まり、その氷が溶けることで小さな凹地ができたものだ.不規則な形で、湖の深さや大きさもさまざまである.二つ目が氷河が押し出した岩石や土砂が堆積してできた丘状地形であるモレーンなどの間にできた低地や小さな盆地状の窪地に水がたまって湖沼である.
このような,氷河作用によって作られた多数の小さな凹地が、雨水や融雪水によって季節的または恒常的に湿地や池になったものは,プレーリー・ポットホール(Prairie Potholes)とよばれ,地域の動植物の生態にとっても重要で水鳥の繁殖地などになっている.この地域には,こうした湖沼や凹地が点在している.
氷河末端が段階的に後退し、モレーンやアイスリセッション(氷塊残骸)が残りこれらがケトル凹地の発生要素となった.このように,モンタナ州北部からカナダにかけての国境付近で見られる多数の小湖沼や凹地は、最終氷期に氷河によって削られたり、堆積物が置かれたりした結果できた地形である.とくに氷河の末端や周辺にできるケトル湖や、プレーリー・ポットホールと呼ばれる湿地状の小凹地はこの地域特有の景観を形成している(図3,画像2,3).


出典:Bruce Millett · W. Carter Johnson ·Glenn Guntenspergen(2009),Climate trends of the North American prairie pothole region 1906–2000,Climatic Change,Vol.93.




